数学的補償モデル(MathMod)
20. August 2025

KELLER Pressure社では年間120万個の高品質な測定セルを製造しています。これらの測定セルはさまざまな製品に組み込んで使用するか、またはOEM 製品として販売します。私たちは製品の品質が高いことを常に重視しています。校正は圧力トランスミッタの製造において、非常に重要な工程です。この工程では「補償」と呼ばれる、数学的補償モデルが大きな役割を果たします。
数学的モデル
Wikipediaでは「数学的モデル」という概念について、次のように説明しています:
「数学的モデルとは、観測可能な世界のある側面を記述するために、数学的表記法を用いて作られたモデルである。」この定義は、私たちの数学的補償モデルにも当てはまります。簡単に言うと、測定セルの物理的特性を分析(校正)し、「数学係数」と呼ばれる値を用いてモデル化し、多項式によって理想的な特性からのずれを補正します。その結果、標準化された出力信号を得ることができます。

校正のみの場合のデータ

数学的に補償した場合のデータ
圧力トランスミッタへの補償
「補償(compensation)」という言葉は、定義上、「バランスを取ること」や「打ち消すこと」を意味します。技術分野では、望ましくない影響を軽減する、または理想的にはそれを完全に打ち消すために講じる対策のことを指します。
圧力測定技術においては、原則として再現可能な誤差のみが補償の対象となります。再現可能な誤差には、非直線性や、TCzero(ゼロ点の温度係数)及びTCsens(感度の温度係数)などの温度誤差が含まれます。それ以外の要素、例えば非再現性、ヒステリシス、長期安定性等はそのまま残り、それらは製造工程で物理的に改善することはできても、数学的に補償することはできません。
補償には、「パッシブ(受動)補償)」と「アクティブ(能動)補償)」の2つがあります。
パッシブ補償とは、温度に応じて特性を測定し、回路内の追加の電気抵抗(受動部品)を用いて補償を行う方法です。抵抗の温度特性は実質的に直線的であるため、補償できるのは一次の誤差だけです。この方法は「アナログ補償」とも呼ばれます。
一方、アクティブ補償(デジタル補償)は、より高次の誤差を補償することが可能です。この方法では、圧力チップ内の温度を継続的に測定し、それに対応する圧力値を割り当てます。これにより、圧力と温度の係数を特定することができ、次の式および追加の補償用電子回路を用いて、誤差のない圧力値を算出することが可能になります。

KELLER Pressure 社はこれまでに、高精度かつ効率的な校正を実現するための多種多様な装置およびソフトウェアを開発してきました。プロセスの各ステップは可能な限り詳細に記録します。測定データはデータベースに保存し、補償のために算出された多項式はトランスミッターの電子回路内に記録します。このようにしてセンサの特性は失われずに、トレーサビリティを確保することができます。
アプリケーション毎のソリューション
製品の段階によって、センサの校正データのみを提供する場合、係数をデータとして提供する場合、あるいは(デジタル)電子回路が補償および信号処理を担う場合など、色々なオプションを用意しています。
オプション:
- 校正データ付き圧力トランスデューサ
- 校正および数学的補償モデル付き圧力トランスデューサ
- 圧力トランスミッタ(校正および補償をKELLER Pressure製の電子回路で実行)
ほとんどの場合は、補償用電子回路を備えた圧力トランスミッタがお客様にとって最適な選択肢です。これによりKELLER Pressure 社の長年に渡る専門知識の恩恵を受けることができるからです。お客様は信号補償について心配する必要もなく、プログラミングも不要で、標準化されたインターフェースを使って製品を自社システムに統合することができます。ただし補償用電子回路には、サンプリングレート、分解能、精度、またはそれらの性能要素の組み合わせに制限があるため、常に最適なソリューションであるとも限りません。
電子回路を内蔵した圧力トランスミッタの周囲温度上限は約125℃です。そのため、高温 環境での用途には適していません。これに対して、圧力トランスデューサであれば、180℃に達する高温でも信頼性の高い圧力測定が可能です。適切な数学的補償モデルを用いた信号補償を適用することで、お客様は高温用途でも希望の性能を実現することができます。
数学的補償モデルを備えたシリーズ11HTが良い例です。これは高温の油井孔の水中ポンプで使用するために特別に開発したセンサです。非常に過酷で厳しい環境下においても、センサは装置や石油掘削の効率向上に不可欠な正確な圧力情報を提供しています。高温対応の電気接続用ワイヤ、顧客仕様の圧力接続部を溶接したシリーズ7LHP圧力トランスデューサをベースにしたソリューションです。お客様はKELLER Pressure社から校正データと計算された数学的補正モデルを受け取り、お客様のシステム内の別の場所で信号の補償を行います。
KELLER Pressure 社は、圧力センサのあらゆる段階に応じた適切な誤差補償ソリューションを提供しています。

KELLER Pressure シリーズ11HT — 油井孔内水中ポンプ向けソリューション