ゾーン0が常に正しい選択とは限らない:実践的にATEXゾーンを理解する

マヌエル・ボラー=ベルガー
09. 4月 2026

爆発防護が産業の現実である理由

産業アプリケーションの多くにおいて、潜在的に爆発性のある雰囲気は早々発生するものではありません。可燃性ガス、蒸気、ミスト、または粉塵が発生する可能性がある場所には、常に爆発のリスクが存在します(爆発が発生するために必要な条件の詳細な説明については、技術記事『圧力計測技術における爆発保護』を参照してください)。化学産業、エネルギー供給、バイオガスプラント、または溶剤の処理設備などがその一例です。水素インフラやガス配給システムなど、より現代的なアプリケーションもこれらの分野に含まれます。

しかし、適した測定技術を選ぶほかに、もう一つ重要な問題があります。それは、測定点がどのゾーンに位置しているかということです。

可燃性ガスの主なアプリケーション

多くの工業プロセスで可燃性物質を意図的に使用します。例えば、水素、メタン、また様々な炭化水素は、エネルギー源、プロセスガス、または化学原料として使用します。同時に、爆発性雰囲気はプロセスの副産物として様々なアプリケーションで発生し得ます。その原因となるのは揮発性溶剤、霧状の液体、または漏出ガスなどです。

典型例:

  • 水素プラントおよび水素充填ステーション
  • ガス圧縮および供給
  • 化学処理プラント
  • バイオガスおよびエネルギープラント

そのような環境においては、電気機器はそれ自体が点火源として機能しないように設計する必要があります。

潜在的に爆発性のある大気中での圧力測定

これらのアプリケーションにおいて圧力測定は重要な役割を果たします。タンク、パイプライン、圧縮機、およびプロセスリアクターの監視などに使用されるので、圧力トランスミッタは爆発性ガス混合物が存在し得る場所に正確に設置されることが多いです。

測定精度と長期安定性に加えて、いかなる状況でも機器(センサ)が着火を引き起こさないことを保証する必要があります。したがって、潜在的に爆発性がある雰囲気で使用する機器は特定の指針、規格、および承認手続きの対象となります。

重要な質問:実際に関係するゾーンはどれですか?

適切な機器を選定する決定要因となるのは媒体だけでなく、測定点が置かれる危険ゾーンも重要なポイントです。特定の場所でどの程度の頻度で爆発性雰囲気が発生するかを示すのが、ゾーン分類です。

ここでよく起こる誤解があります。可燃性ガスが使用されていれば自動的に最も高い危険等級が適用されると考えがちですが、爆発性雰囲気の発生頻度は実際には個々の産業プラント毎に大きく異なるのです。

例えば、タンク内では爆発性混合気が常に存在している一方、換気の良い配管エリアではめったに発生せず異常時のみの場合がほとんどです。ATEXシステムでゾーンを0、1、2に区分している理由が、まさにこれなのです。

したがって、適切な圧力測定技術を選ぶうえで重要な点は、測定点の分類を正しく行うことなのです。

ATEXゾーン:基本原則

潜在的に爆発性のある雰囲気を定義づけるのは可燃性物質の存在だけでなく、爆発性雰囲気が発生する可能性によっても定義されます。この基準に基づいて工業プラントは異なる危険区域に分類されます。

分類は、プラントのオペレーターまたは設計者によるリスク評価の一環として行います。漏れのリスク、換気、プロセス条件や運転方法などの要因が、この評価において決定的な役割を果たします。

ゾーン0
爆発性の雰囲気が常時、長時間、または頻繁に存在する区域を指します。典型的な例としては、可燃性ガスが常に存在するタンク、容器、またはプロセス反応器の内部が挙げられます。

ゾーン 1
通常の運転中に時折爆発性の雰囲気が発生する可能性のある区域を指します。例えばバルブ、圧縮機、またはリークが発生している可能性のある箇所の近くが該当します。

ゾーン 2
通常の運転中には爆発性雰囲気が生じない、あるいは生じた場合でも短時間のみの区域を指します。換気が十分にされているプラント内区域や配管周辺部などです。

重要ゾーン分類は環境を表すものであり、機器を表すものではありません。この基準に基づいて電気機器に許容される保護概念が決まります。

ゾーンと機器カテゴリの関係

ゾーン0では、故障が発生した場合でも点火を確実に防ぐことができる保護概念が用いられます(本質安全防爆)

ゾーン1では、耐圧ハウジングを備えた製品のように、機器内での潜在的な爆発を安全に閉じ込めることができる他の保護概念が用いられることもあります(耐圧防爆)。

ゾーン2では、通常の運転中には点火源を生じさせず、放電や過熱を防ぐように設計された保護概念が使用されます。

安全でかつコスト効率の高いシステム計画のためには、ゾーンと機器カテゴリーを正しく

割り当てることが極めて重要です。

ゾーン0 => カテゴリー 1

ゾーン1 => カテゴリー 1 または 2

ゾーン2 => カテゴリー 1, 2 または 3

実例:水素充填ステーション

特定の例を見ていくとゾーン分類への理解がより明確になります。水素充填ステーションは高度に可燃性のガスを扱いつつ様々なプロセス工程を含んでいるので、例として最適です。水素補給ステーションは、複数の機能的エリアから構成されています:貯蔵、圧縮、中間貯蔵、車両への供給。それぞれのエリアで爆発性雰囲気の形成に異なる条件が存在しています。

プラントの機能領域

水素補給ステーションの一般的な構成要素は以下のとおりです:

  • 圧縮水素用貯蔵タンク
  • 水素を所定の圧力まで高める圧縮機
  • 高圧貯蔵タンクまたはバッファシステム
  • ガスを分配するための配管およびバルブ
  • 車両への燃料補給用ディスペンサ

これらすべての領域においてプロセス圧力が監視されるため、プラント内のさまざまな箇所で圧力トランスミッタが使用されています。

典型的なゾーン分類

水素タンク内に可燃性ガス混合物が常時存在しているので、通常このエリアはゾーン0に分類されます。

圧縮機、バルブ、または継手など潜在的なリーク源があるエリアでは、運転中に水素が漏れることが時折あります。これらのエリアはゾーン1に分類されることが多いです。

しかし、プラントの大部分はこれら直接的なリーク源の外側に位置しています。したがって換気の良いエリアにある配管、計測ポイント、プラント機器などはゾーン2に分類されます。

圧力測定技術との関係

圧力測定技術に関して言うと、同じプラント内であってエリアにより異なる防爆要件が適用されることがあることを意味しています。

  • タンクや容器内の測定ポイントは通常ゾーン0にあります
  • 圧縮機やバルブ付近の測定ポイントはゾーン1にあります
  • 配管内や十分に換気された区域の測定ポイントはゾーン2に分類されます

構造が複雑なプラントだと、測定ポイントの大部分が最も危険度の高いクラスに該当しないのは明白です。つまり、正確に分析をすることで技術的に適切かつ効率的な爆発防護が可能になるのです。

    保護概念の比較

    ゾーン分類に応じて、電気設備には異なる保護概念が使用されます。

    Ex ia:エネルギー制限とバリア

    本質安全防爆(Ex ia)タイプの保護では、火花や加熱が発生しても着火することがないよう回路内の電気エネルギーを制限しています。これを実現するために、測定回路全体のエネルギーを制限しています。この目的のために安全バリアまたは絶縁アンプを使用します。

     

    主な特徴:

    • 回路全体でエネルギーを制限している
    • バリアや絶縁アンプなどの追加コンポーネントを必要とする
    • 計画と文書化への要求が高い

    Ex db:耐圧エンクロージャ

    別の保護の方法として、潜在的な発火源を頑丈な筐体内に閉じ込める原理があります。装置内部で爆発が発生しても、外部に伝播させない構造です。

    特徴:

    • 潜在的な爆発圧力に耐える堅固な筐体

    • 回路への追加バリアが不要

    • 構造が頑丈

    Ex ec:設計による点火源の防止

    安全増防爆(Ex ec)はアプローチが異なっており、通常の運転中であっても潜在的な点火源の発生を防ぐことを目的としています。スパーク、高温表面、その他の潜在的な点火メカニズムを排除するように装置が設計されています。

    特徴::

    • 設計によるスパーク防止
    • 表面温度の制限
    • 回路での更なるエネルギー制限を必要としない
    • 耐爆装置と比較して設計がよりコンパクト

    製品ラインナップ内での位置付け

    様々な保護概念は、潜在的に爆発性のある環境向け弊社製品ラインナップにも反映しています。危険区域やプラントの要件によって、異なるデバイスコンセプトを使用します。

    弊社のラインナップが複数の保護概念を網羅していることは、オペレーターやプラント設計者がそれぞれ異なる設置条件毎に最適なソリューションを提供するために重要な意味をもちます。

    ゾーン0:本質安全防爆​(Ex ia)

    タンクやプロセス容器内など、爆発性雰囲気が常に存在するアプリケーション向け製品。

    ゾーン1:耐圧防爆(Ex db)

    潜在的な爆発を筐体内に閉じ込める頑丈な装置で、回路内のエネルギーを制限することなく動作することが可能。

    ゾーン2:安全増防爆(Ex ec)

    危険度の高いアプリケーションに加えて、産業プラント内のゾーン2エリアには多数の測定ポイントがあります。このような用途には、安全増防爆機器を使用できます。

    23SYをはじめとするY-Lineがゾーン2承認を受けたことにより、汎用アプリケーション向けの23SYをゾーン2に使用することもできるようになりました。

    安全増防爆圧力トランスミッタ

    ゾーン2にすると何が変わるのか

    測定点のゾーン分類は、使用する装置だけでなく、測定システム全体へ影響があります。

    分類により影響されるのは主に計画、設置、測定技術の運用面です。

    バリアを排除できる

    本質安全防爆型の測定システムでは、回路全体のエネルギーを制限する必要があります。そのために、測定機器と制御システムの間に安全バリアまたは絶縁アンプを設置します。これらの部品は潜在的に爆発性の雰囲気で点火し得るエネルギーが発生しないよう、安全区域に配置します。

    安全増防爆タイプ(Ex ec)を使用するゾーン2のアプリケーションでは、このようなエネルギー制限は不要です。測定機器は評価用電子機器や制御システムに直接接続できます。

    設置作業を軽減できる

    本質安全防爆システムはケーブルの長さ、静電容量、およびインダクタンスを含む回路全体の詳細な設計を必要とします。

    適切に認可された機器を使用したゾーン2の設置であれば、これらの要件の大部分が不要になります。非危険区域での設置により近いものになり、計画と組み立てが大幅に簡素化されます。

    システムの複雑さを低減できる

    追加の部品が不要になるので、配線、制御盤のスペース、潜在的なエラーの原因を減らすことができます。この効果は、多くの測定ポイントを持つ大規模なプラントだとより顕著に表れます。追加の部品が多いほど、計画、設置および保守に必要な労力が増加します。

    経済的なメリット

    技術的なメリットに加えて、システムを簡素化することで経済的なメリットも得られます。バリアなどの追加部品を排除することで材料費だけでなく、計画、設置、試運転にかかる労力も削減することができます。

    さらに、システム構造がシンプルだとメンテナンスも容易です。部品が少ないほど故障リスク箇所を減らすことができ、運用中のトラブルシューティングも容易になります。

    プラントオペレーターやインテグレーターにとって、適切なゾーン分類は単に安全上の問題だけでなく、測定システムを効率的かつ費用効果高く実装するための重要な要素でもあります。

    結論

    適切な圧力測定技術の選択は、計器そのものから始まるのではなく、測定ポイントの正しいゾーン分類から始まるのです。

    特にゾーン0またはゾーン1でのアプリケーションには高い要件が求められますが、産業用測定ポイントの大部分は実際ゾーン2に位置しています。ゾーン2なら回路内で追加のエネルギー制限を必要とせずに、着火源を防ぐように設計された機器を使用することができます。

    安全バリアをなくすことで、測定システムの計画、設置、および文書化を簡素化できる一方で、システムの複雑さも低減できます。

    したがって、精密なゾーン分類を行うことで、防爆対策を安全かつ効率的に実施でき、プラントの実際の状況に適したソリューションを選択することが可能になります。

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